賃貸期間中の修繕義務と契約終了時の原状回復義務との関係

 

 賃貸借契約中の修繕義務に関しては、606条1項に規定がある。原則として修繕義務を賃貸人に負担させた規定である(修繕不可能であったり、過大な費用が生じるような場合は除かれる)。もっとも、同規定は任意規定とされている。実務的にいえば賃貸人が一定範囲の修繕義務を免れるように規定されている「特約」があることが普通である。
 そこで、問題は、当該「特約」の有効性の範囲である。一般的には「小修繕」については、賃貸人は修繕義務を免れるが、「大修繕」は免れることはできないと解釈されているようである。しかし、実務的には、どこまでが「小修繕」なのか、どこからが「大修繕」なのか、必ずしもよくわからない(「中修繕」などという言葉と使用している文献もあった)。

 さらに、問題なのは契約終了時点の原状回復義務との関係ではないだろうか。というのも、原則的には、自然損耗部分について賃借人は原状回復義務を負わないとされているところ、修繕が必要な部分は、通常損耗ないし自然損耗から発生した部分も相当程度あると解されるからである(私の文献調査が十分でなかったせいかもしれないが、この点を意識的に関連付けて記載してあるものを見つけることができなかった)。

 通常損耗ないし自然損耗から生じた修繕が必要な部分については、やはり原状回復義務の部分と同じような理屈が妥当するのではないだろうか。すなわち、現状回復義務に関して、判例によれば、通常損耗にかかる部分について、賃借人に修繕義務を負担させることは原則として否定されている(最判平成17年12月16日判時1921号61頁,改正民法621条参照)。なぜならば、建物の使用によって通常生じる経年劣化や自然損耗の補修費用は、賃料の中に含めてすでに支払われているものと解されるからである(賃料が特段に低額など特約の合理性が認められる事情があれば別である)。

 この理屈からすると、たとえ使用中における修繕義務の問題であっても、その修繕必要な部分が、経年劣化や自然損耗から生じた補修費用と解されるのであれば、その部分については、賃料の中に含めてすでに支払われているものと解されるからである。したがって、原則として賃借人が負担する必要のないとされている「通常損耗」については,使用中の修繕義務の問題も同じように理解するべきであり、原則としては賃貸人が負担すると考えるのが論理的であると解されるからである。もっとも、このような通常損耗についても前記判例によれば「特約」によって、賃貸人が修繕義務を免れる場合があるとされており、当該特約の有効性の要件としては、①具体的な修繕費用の範囲が契約書などに明記され、②この点について十分な説明が行われ、③これについて賃借人が十分に認識し了解したこと、といった特段の事情が必要とされている。したがって、このような要件を充足していない「通常損耗」部分の修繕については、原則に戻って賃貸人が負担するということになると解されるのである。

 結局、修繕義務に関して「特約」で規定されていても、通常損耗、自然損耗にかかる部分については、賃貸借契約の趣旨(606条1項、改正民法621条参照)や、消費者契約法10条の観点から、その特約が無効ないし制限的に解釈されるのではないかと考えられる。

 

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