即日面接制度についての雑感

　私は、弁護士法人岡山パブリック法律事務所（岡山県）に約７年半、法テラス指宿法律事務所（鹿児島県）で３年間、弁護士をしていました。その後、実家のある関東に戻り、現在は、東京弁護士会に所属しています。
　以前に所属していた事務所が、都市型公設事務所や法テラスの事務所だったせいかどうかはわかりませんが、個人の債務整理案件は比較的多く、相当数処理をしてきたと思います（破産、個人再生、任意整理）。
　ところで、東京弁護士会に登録換えをして、今までと違うなと感じるのが、東京地方裁判所で行われている「即日面接」という制度です。
東京地裁民事２０部の裁判官によると、概ね以下のような理由から運用を変更したとのことでした。すなわち、
　「今までは、同時廃止を前提に、問題のある事案は、管財事件回避のため積立・任意弁済を求める形で運用してきた（管財事件は予納金５０万円以上の事前納付などがネックになっていた）。しかし、事件数が多くなり事件処理が困難となり滞留するようになった。そのため、予納金を低額化し、審理期間も大幅に短縮、換価基準も緩和するなど管財事件を軽量化して、管財事件としての申立てをしやすくして、破産法が本来予定している管財手続を原則化する運用に変えた（少額管財制度）。」
　そこで、これと併せて、即日面接制度を導入して、申立てから３日以内に代理人面接をして、少額管財として管財事件にするか、同時廃止にするか、振り分けるということでした。また、即日面接制度は、裁判官との１発勝負なので、申立代理人には、事前に十分な調査をしておいていただきたいということでした。
　私が、過去に岡山、鹿児島で弁護士をしてきた経験から言わせていただくと、東京地裁の同時廃止に関する裁判官の裁量の範囲は、極端に狭いなというのが印象です。
　地方であれば、おそらく同時廃止にしてもらえたと思われる案件もほとんどが少額管財に流れている印象を受けました。形式的基準から外れた場合でも地方であれば、裁判官の裁量で、再度具体的に検討して同時廃止にしていただいていたものが、東京地裁では通用しない感じです。また、実際に裁判官と面談をして感じたのですが、裁判官自体、申立記録にどこまで目を通しているのか疑問を感じました（これは同時に申立代理人にもいえることなのかもしれませんが）。
　従前、申立代理人に対して、事務員任せではないかという批判がありました。しかし、東京地裁の運用は、裁判官についても書記官任せではないかとの印象も受けてしまいます（裁判官によっては十分に記録を検討しているのかもしれませんが）。
　裁判所は、一方で、申立代理人に十分な調査や手続きへの協力を求めていますが、申立て前に、十分な聴き取り、調査を行っていると思われる事件の場合には、形式的基準を少し外れた場合であっても、もう少し裁量で同時廃止をする運用をしていただきたいという感覚を受けました。
　しかし、裁判官の裁量の幅を増やすためには、裁判官自身が十分に記録に目を通す必要があります。
　そのためには、書記官が目を通した段階で、形式基準では少額管財事件になるが、申立てまでに十分な調査がしてあるのであれば、同時廃止にしても良いといのではないかという事件を選別してもらい、そのように振り分けた事件については、裁判官自身も即日面談までに十分に記録に目を通してもらう運用が必要だと思いました。このようにお互いに記録に十分に目を通すからこその１発勝負、真剣勝負なのだと思います。単純に、事件数処理のための運用にしてはいけないと思います。
　ちなみに東京弁護士会に登録換えをした後、さいたま地方裁判所へも申立てをしましたが、細かい基準はともかく、感覚的には、岡山や鹿児島と異ならない感じを受けました。やはり、事件数が多い東京地裁ならではの、特殊な運用なのだと改めて感じた次第です。