当事者からみた離婚原因と裁判所からみた離婚原因
「協議」で離婚する場合や「調停」で離婚する場合は、法的には離婚原因はあまり重要ではありません(もちろん、当事者間では離婚原因は常に重要であろうと思いますけれども)。法的には、当事者間で婚姻を解消する合意があればそれで足り、離婚の理由はなんでも良いのです(性格が合わない。単に顔が見たくないなどでもOK)。
問題は、協議が整わず、調停が成立しないときです。この場合、どうしても離婚をしたいということであれば、離婚訴訟を提起することになります。
そうなると、離婚したい側が、法的な離婚原因(民法770条1項)をきちんと主張しなければならなくなります。このあたりからは、弁護士の法的アドバイスが重要になってくると思います(勿論、それ以前でも、このような事態に陥らないために弁護士に相談し、依頼するということは重要だと思います。)。
法的な細かい議論を省きますが、離婚原因について、裁判所的には、民法770条1項5号の「そのほか婚姻を継続し難い重大な事由」があるか否かを中心に考えています。
ところで、この「婚姻を継続し難い重大な事由」というのは、いわゆる「婚姻破綻」という意味なのですが、裁判所は、この「婚姻破綻」をどのように認定しているのでしょうか。
注 この「婚姻破綻」が問題になるのは、基本的には、一方が「離婚したい」と言っていて、他方が「離婚したくない」と言っている場合です。よくある「離婚については合意している」が、親権者の指定や財産分与で争いがある場合は、婚姻破綻の認定そのものについては、ほとんど問題はありません。
裁判所が一般的に、どのように婚姻破綻を認定しているのかですが、最初にみているのは「相当期間の別居」の有無とされています。
「相当期間の別居」があれば、それだけで婚姻破綻が事実上推定されてしまいます。
そのため、「相当期間の別居」とは、いかなる期間なのかということが問題になりますが、実際の事件では、この「相当期間の別居」がどの程度の期間のことをいうのか、なかなか難しいです。勿論、10年も別居期間があるという場合は概ね問題はないと思いますが、相談に来られる事案としては、1,2年という方も(1年未満を含む)多いと思うので、なかなか微妙な感じがするのです。事案によっても、裁判官によっても異なるようです。感覚的なのですが、1年、2年だとまだ、「相当期間の別居」とは言い難い感じがしますが、3年あたりから、微妙な感じがしてきます。やはり事案によって個別に検討していくしかないのではないかという気がします。私が、過去に扱った事件でも微妙な事件がありました。慎重な検討が必要だと思います。
「相当期間の別居」がない場合には、離婚したい側(原告)が、婚姻が破綻しているという特段の事情(暴力、不貞など)等を主張立証する必要がありますし、他方、離婚したくない側(被告)は、破綻していない特段の事情を主張立証する必要があることになろうかと思います。
いずれにしても、婚姻破綻の有無が争点になっている場合には、事案を慎重に検討して、今後の訴訟の進行を考える必要があります。