不貞の立証が困難な交際相手に対する慰謝料請求
不貞行為とは、自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと(異性との性交)をいうとされています(最高裁昭和48年11月15日 判タ303号141頁)。
もっとも、一般的には、異性との性交の事実があったかどうか、そのこと自体の立証は容易ではないといえます。
たとえば、夫婦の一方配偶者とその相手方との肉体関係の存在を立証するための客観的な直接証拠(不貞行為そのものを確認できる写真、動画)があれば良いですが、そのような証拠がない場合には、ラブホテルへの出入りが確認できる写真、不貞行為を認める内容の手紙、メール、日記、携帯の着信履歴、手帳に記載されている予定、ホテルの領収書等々、間接的な証拠を積み上げて立証していく形になろうかと思いますが、信用性ある証拠をどこまで積み上げられるかは、事案によります。
もっとも、不貞行為を完全に立証できるといえるかは微妙だが、相当程度怪しいという立証はできそうだというケースは、それなりにあるのではないでしょうか。
少し古い判例ですが、東京高裁昭和47年11月30日(判タ291号329号、判時688号60頁)は、夫の異性との交際が不貞行為とまでは認められないが社会的妥当性の範囲を逸脱するものだったとして、民法770条1項5号の婚姻を継続し難い重大な事由に当たるとした上で、この場合において、相手方の女性に対し、婚姻関係を破綻させたものとして、妻に対する損害賠償義務を認めています。
この事案は、不貞行為までは認定できないが、夫の相手方の家への頻繁な出入りがあったこと、出入りの時間も普通ではなかったこと、夫の下着に相手方の名前があったことなどから、社会通念を逸脱する違法な行為があり、これが原因となって、婚姻生活が破綻したものと認定しているようです。
結局のところ、社会的妥当性の範囲を逸脱する異性との交際とはどのような事実かということが問題になるのですが、不貞行為の事実を完全に立証できないとしても、社会的妥当性の範囲を逸脱した異性との交際によって、婚姻関係が破綻したという関係が認められるのであれば、当該相手方である異性に対し、慰謝料請求をすることは可能ということになろうかと思います。